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大阪高等裁判所 昭和56年(ネ)1549号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

二被控訴人の抗弁について

1 控訴人と江口とが昭和五六年一二月二三日の当審第三回口頭弁論期日において江口の控訴人に対する本件契約に基づく債務(主たる債務)について、本件和解をしたことは当事者間に争いがない。

2 本件和解は、別紙和解条項記載のとおり、江口が控訴人に対し二〇万円の債務を認めてその支払方法を定めたこと、残額部分についての訴えを取り下げることを内容とするものであるところ、被控訴人は残額部分の訴えの取下げの実質は訴えの取下げではなく債務の免除等である旨主張するので検討するに、前記一認定の事実、原審における相被告本人江口三郎の尋問の結果及び弁論の全趣旨によると、控訴人は、本件契約に基づく求償債権の主たる債務者である江口とその連帯保証人である被控訴人を共同被告として訴えを提起したところ、原審裁判所が両者に対する請求を併合審理していずれも棄却する旨の判決をしたので、両者を相手に控訴をしたこと、そして当審においても両者に対する請求が併合審理されていたが、受命裁判官による和解が試みられたところ、江口の訴訟代理人は、江口が靴底加工の工員で現在沖仲仕をしているが、収入が少なく求償債務全額を弁済することが困難な状況にあるので弁済の金額や方法について考慮して欲しい旨を述べ、控訴人の訴訟代理人も江口の窮状を調査により承知していたので、結局右両者間に本件和解条項一項のとおり、控訴人が取りあえず江口から求償債権のうち二〇万円の分割弁済を受けることに合意ができたこと、しかし控訴人としては弁済資力について問題のない連帯保証人である被控訴人に対してはそれとは別に支払を受ける意向をもつていたので、いずれも弁護士である江口及び控訴人双方の訴訟代理人において、控訴人が江口と右のような和解をしても連帯保証の附従性によつて被控訴人に対する関係で右求償債権のうち残額部分が消滅するというようなことのない方法を検討、協議した結果、主たる債務者である江口に対しても右残額部分について債務の免除をしたり請求を放棄したりせず、特に本件和解条項三項のように表現したものであることが認められ、右認定の事実によると、控訴人は江口に対する右残額部分の訴を取下げ、江口がこれに同意したにすぎないことは明らかであるから、被控訴人の右主張は理由がない。

3 被控訴人は、控訴人の江口に対する請求のうち残額部分が訴えの取下げであれば、右残額部分は民訴法二三七条二項により再訴が許されないので自然債務になつたものであり、従つて本件保証債務も自然債務になつたので訴求することができない旨主張するので判断する。

ところで、債権者が本案の終局判決を受けた後における訴え取下げ後の債務は、民訴法二三七条二項により再訴が禁止されているという意味では、いわゆる自然債務であるが、右規定の趣旨は、国家機関(裁判所)が折角本案判決をして紛争の解決を図つたのに、それを失効させて徒労に帰せしめた債権者に対し、同一紛争の解決の要求をしてきても相手にしてやらないというものであり、またそれ以上のものではないのであるから、債権者が主たる債務者とその連帯保証人を共同被告として訴えを提起し、右訴えの併合審理中に、主たる債務者と訴えの一部の取下げを含む訴訟上の和解をして主たる債務者に対する訴を維持すべき利益ないし必要がなくなつたものの、なお、連帯保証人に対しては訴を維持すべき利益ないし必要があるような場合にまで、主たる債務者に対する訴えを取下げたことを理由に、連帯保証人に対する訴権を奪うものではないと解するのが相当である。

これを本件についてみるに、前記2認定の本件和解成立の事情に照らすと、控訴人は、主たる債務者である江口に対する残額部分の訴えを取下げても、なお、その連帯保証人である被控訴人に対しては求償債権全額の訴えを維持すべき利益ないし必要があつたことは明らかであるから、被控訴人の本件保証債務が訴権のない債務に転化するいわれはなく、被控訴人の右主張も理由がない。

被控訴人は、控訴人から本件保証債務の履行を強制されて履行をした場合には、被控訴人が取得する江口に対する求償権や代位権の行使が、控訴人の江口に対する訴えの取下げによる再訴禁止で妨げられる旨主張するけれども、再訴禁止の趣旨は前記のような訴訟法上の効果を原告及びその承継人に及ぼすだけであつて、前訴で問題となつた実体上の権利は消滅しないから、控訴人の江口に対する訴えの取下げにより、被控訴人の権利行使に支障を来たすような事情は見当らず被控訴人の右主張も理由がない。

(仲西二郎 長谷喜仁 下村浩蔵)

【和解条項】

一 江口三郎は控訴人に対し和解金二〇万円の支払義務のあることを認め、右債務を昭和五七年一月から完済まで毎月末日限り金一万円宛に分割し控訴人大阪営業所(大阪市西区京町堀一丁目七番一号)へ持参又は送金して支払う。

二 江口三郎が前項の分割支払を一回分でも怠つた時は期限の利益を失い既払額を控除した残債務全部を即時に支払う。

三 控訴人は江口三郎に対するその余の訴を取下げる。江口三郎はこれに同意する。

四 訴訟費用は第一・二審とも各自弁とする。

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